182人が本棚に入れています
本棚に追加
布掠れの生々しい音に、餓えた心臓は正直だった。
ぱたん、と静かにドアが閉まり、はぁっと大きく息を吐いた。
のそっと壁から顔を出すと、畳まれた衣類が見えた。
(丁寧な人だなぁ)
同じ男でも、こんなにも差があるものなのか。
すこしして流れて来たシャーというシャワー音に、煩悩から来る心臓の鼓動が煩い。
狭いからすぐ近くで聞こえても仕方ないんだけども!!
(いくら彼氏と別れたばっかだからって、ものの数時間で見知らぬ外国人(超絶イケメン)を女ひとりのアパートの一室に連れ込むなんて。我ながら、どうかしてるわ・・・)
目の前にふてぶてしく居座るごみ袋。
正確には、中身が憎たらしいの対象であるが。
イラついて憎しみを込めまくり、親の仇の如く、むんずと掴んで、ぼすぼすとごみ袋に押し込んだ男物の服。
とっととおさらばしたかった代物を、今一度部屋の空気に晒すなんて虚しいとも思う。
バラバラとふりかけ状態だった紙屑が、床に散った。
とっとと捨てたかったが、ゴミの収集日とずれていた為、部屋にそのまま置きっぱなしになっていたものだ。
(・・・サイズ大丈夫かな?)
自分が着るにはぶかぶかのTシャツを引っ張り出す。
今、シャワーを浴びている主は、身長がすこぶる高いのだから。
最初のコメントを投稿しよう!