第1章

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布掠れの生々しい音に、餓えた心臓は正直だった。 ぱたん、と静かにドアが閉まり、はぁっと大きく息を吐いた。 のそっと壁から顔を出すと、畳まれた衣類が見えた。 (丁寧な人だなぁ) 同じ男でも、こんなにも差があるものなのか。 すこしして流れて来たシャーというシャワー音に、煩悩から来る心臓の鼓動が煩い。 狭いからすぐ近くで聞こえても仕方ないんだけども!! (いくら彼氏と別れたばっかだからって、ものの数時間で見知らぬ外国人(超絶イケメン)を女ひとりのアパートの一室に連れ込むなんて。我ながら、どうかしてるわ・・・) 目の前にふてぶてしく居座るごみ袋。 正確には、中身が憎たらしいの対象であるが。 イラついて憎しみを込めまくり、親の仇の如く、むんずと掴んで、ぼすぼすとごみ袋に押し込んだ男物の服。 とっととおさらばしたかった代物を、今一度部屋の空気に晒すなんて虚しいとも思う。 バラバラとふりかけ状態だった紙屑が、床に散った。 とっとと捨てたかったが、ゴミの収集日とずれていた為、部屋にそのまま置きっぱなしになっていたものだ。 (・・・サイズ大丈夫かな?) 自分が着るにはぶかぶかのTシャツを引っ張り出す。 今、シャワーを浴びている主は、身長がすこぶる高いのだから。
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