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ドォオオォンン――ッ!!
黒塗りの車体が猛スピードで突っ込んできたのは、ほぼ同時だった。
ここは高速ではない。
余程の理由や事態が発生しない限り、渋滞車線でスピードを落とさないのは、正気の沙汰ではない。
追突された反動で白い車は、前の黒い車に衝突した。
前後からの凄まじい衝撃に青年の体が揺さぶられる。
両隣りに居たふたりの男が青年に覆いかぶさり、青年も反射的に身体を屈め、リアシートの足元にすばやく身を隠した。
前の車の搭乗者が一斉に降り、黒塗りの車に発砲した。
突然の銃撃戦に一帯が戦慄する。
悲鳴を上げる者。
スマホで撮影する者、
110番あるいは119番通報する者。
『追突された!至急応援を!』
車内で青年を庇いながら、いかつい顔をしたひとりが無線に声を荒げた。
追突した車は急速でバックし、パンパンと乾いた音を嘲笑うかの様に逃走した。
発砲していた、ひとりが無線を取り出した。
タイヤと地面が擦れる高い音を遠くに、周辺は嵐が過ぎ去った後の様に静まり返った。
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