第2章

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「カナサンっ…」  ソファに彼が座っていた。周囲にはさっきの謎集団と、スーツを着た外国人男性、唯一日本人らしき白衣を着た男が立っていた。 (また、スーツ)  可奈は眉毛をひくり、と動かした。 『スーツのひったくり』に遭遇してから、どうにも警戒心が出てしまう。  彼は立ち上がると、駆け寄るなり、可奈を抱き締めた。 (いっイキナリ、ハグぅ~!? そりゃ、確かに外国では普通だけど)  日本だと珍し過ぎるワケで。しかもこんなイケメンとなれば、可奈の体温は急上昇した。 「…やはり、間違いないのですか?」    厳つい男が、白衣の日本人に尋ねる。 「はい、頭部強打による『逆光性健忘』です。また、ご自分が何者であるかなどの個人的な記憶がありませんが、生活に関する知識・行動・マナーなどに障害は見受けられませんので、生活される分には支障はないでしょう」 「そうですか。ありがとうございました」  お大事に、と一礼して白衣の日本人は退室して行った。 「松浦可奈さん、ですね」 「は? はい…」    厳つい男から唐突にフルネームで呼ばれ、可奈は困惑した。 「時間が無いので、簡単に説明致します。殿下と共に我が国へ同行して頂きたい」 「は?」 (殿下?) 「貴女が、部屋に連れ込んだこの方は、レリーチェエルデ国皇子・ミハイル・ピエール=アレクサンドル・ローゼンブラド様です」 「は?」 (……呪文?)  男の口から発せられた、一度では覚え辛い長い言葉の羅列。 (言うに事欠いて…、王子様? ナニコレどっきり?) “ミハイル”、と呼ばれる青年の腕の中から、頭を出してあちこちを見渡す。 「もしかして、バラエティー番組の撮影と思われていますか?」 「…そうですよね?」 「頼む!! ドッキリだと断言してくれ!!」との思いを込めて、可奈は厳つい男を必死で見つめた。
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