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「はぁッ!? ちょっと完全強制じゃないの! わたしの意思完全無視?!」
ミハイルに抱きしめられて、ギャンギャン吠える様は、飼い主に宥められている小型犬状態だ。
「これは国家レベルの非常にデリケートな問題です。同行してください」
横からアボットが懇願して来た。
「国民の大半は王室肯定派ですが、逆の者がいるのも事実です。どこからか情報が洩れ、
殿下がお忍びで来日されたのを狙ったと思われます」
「さっき、催涙弾みたいなのを投げ込んできたのが反対派って事?」
「過激思想の人間もおります。いくら銃規制のある日本でも、母国よりは警備が手薄になりますから。専属ボディガードである私を始め、SPの中でも手練れを」
「ちょと待って、そもそもなんで、ミハイル、殿下、は記憶喪失になったのよ」
厳つい男の説明と可奈の声が重なる。厳つい男は懐からスマホを取り出した。
「夕方流れた速報です。ご覧になりませんでしたか?」
可奈は提示された画面に見入った。
(そういえば、居酒屋で飲んでた時…)
全く気にも留めなかったテレビ速報が脳内を通り過ぎていく。
「居酒屋で、やけ酒されてた方には愚問のようですね」
さっきから、このイカツイ男は、やたらと自分に突っかかっていくる。
「どちらにしろ詳細を読まれても無駄ですが」
本文をタップして見せるが、渋滞した車線に車が突っ込んだ事以外、何も記載されていない。
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