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はぁっはぁっ、と可奈は肩を大きく上下させ呼吸した。
・・・叫び過ぎた。
アタマがくらくらする。
通りすがりの人々がビクッと肩を震わせ、直後に白い眼を向けながら通りすがって行く。
「やだ、こわーい」「あんなだから男いねーんだよ」
遠巻きに、ひそひそと聞こえて来る声が、小さくグサグサ刺さる。
すぐ横の高級ブランドのショーウィンドウに手を当てて、ずるずるとしゃがみ込んだ。
タイトスカートから出ているストッキングが伝線するかなんて、もう知るか!
好奇の目だけを注ぎながら、カップル行進は過ぎていく。
邪魔だよな、サイアクー、って声も聞こえる。
じゃあ、警察でも呼べば?って抗議は、残りのアルコールに喰われた。
惨めついでにその辺に蔓延るカップルに眼を飛ばしてやった。
なんかキレイ系の女子やゆるふわ系の女子ばっかり。
(どうせわたしはどっちにも当てはまんないっつの!)
首を傾げれば、丁度メイク直しにお誂え向きの濃紺のドレープがディスプレイされている。
重たい瞼で半分サイズになった泳ぐ目と熱赤の頬が映っていて。
化粧崩れした、女子力のカケラもない見飽きたカオ。
『キツイ』 『カワイくない』
別に美人系でもないし、可愛い系でもない。
至ってふつうの、見るからに日本人的な顔立ち。
お洒落は人並みに気を使ってはいるけど、どうにも癒し系な、乙女チックな服装は昔から似合わない。
小学校の卒業式で着る様な白いブラウスとブレザーの上下。
その延長線上にあるコンサバ系。
そりゃ、時々はみ出してみたりもした。
ふんわり きらきらした お姫様みたいなカッコに。
どっちがオンで、どっちがオフだか判りゃしない。
『仕事着でデートかよ、萎えるわ』
でも、CAみたいに洗練された独特の華のあるスタイルには、逆立ちしたってなれはしない。
こげ茶色の瞳を縁取るツリ気味の瞼は色白く怜悧さが漂う。
その分、ちょっと眉を寄せただけで、怒ってるの?と言われる始末だ。
セミロングの髪はアッシュブラウンに染めているが、直毛でこれまたお堅い印象。
いわゆる“有能”キャリアウーマン系。
まだ“キャリア”、の域には達していないけれども、
そういうのが好みでない男がうじゃうじゃいるのも事実だ。
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