第1章

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(女は男の世話係じゃないっての!!) あーもぉ、さっさとコンビニ行こう!!と思い直して、 ざりざりした灰色の舗装材を手で押した。 お尻が地面から離れたら、足元がふらついて一歩後ずさる。 全体重が右足の外側にいってしまい、そのまま横倒しになった。 おまけにサイフ以外のバッグの中身はぶちまけられ、片方のパンプスまで脱げてしまった。 ―――クスクス ―――やだぁ~ 雑踏を掻き分けて、ちらほらと聞こえる嘲り。 気持ちも惨めだが、地面に強打した膝が、じりじりひりひりと熱を持って、地味に痛い。 無情にもカップルを大いに含む人々の群れは通り過ぎていく。 「ったぁ~・・・」 ほんとうに痛い。こんな派手に転ぶなんて、小学校以来じゃないか? アルコールが完全に回り切ったカラダはいう事を聞いてくれず、 そもそもカラダに命令を出す筈の脳みそ自体が酔っぱらってるのだから尚更意味が無い・・・。 やっとこさっとこ、腕に力を入れるような入れないような感じで 固い地面から、顔を持ち上げ距離を取った。 「大丈夫ですか?」 雑踏の音とは別の声が正面から聞こえた。 目の前に手が差し伸べられた。 ぼやける視界に、差し出された手の元を目で追う。 手の主を確認すると、人の良さそうなスーツ姿のサラリーマンが屈んで自分へと、手を差し出していた。  
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