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「ほら、最近杏奈ちゃんくらいの年頃の読モさんたちが何人か行方不明になってるじゃない。警察が誘拐の線で捜査してるって聞いたよー。犯人はこの辺りで暴れまわってる通り魔かもしれないって言うし、もうおじさん心配で心配で」
丸谷はそう言って、おおげさに肩をすくめて首を振ってみせた。
杏奈は彼のそのしぐさに、思わずくすりと笑った。
「そうですね、誘拐されないように気をつけます」
「もうすぐ暗くなっちゃうし、人通りの多い道選んで帰るんだよー」
丸谷はそう言うと、ひらひらと手を振りながらパソコンに向かって歩いて行った。
これから編集と今日撮影した写真の選別を行うのだろう。
スタジオの壁にかかっている時計に目をやると、時刻はすでに18時を回っていた。
日の長い夏場とはいえ、そろそろ本格的に夜の帳が下りてくる頃だ。
「お先に失礼しまーす」
杏奈はその場にいた全員に頭を下げ、足早にスタジオを後にした。
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