4人が本棚に入れています
本棚に追加
私服に着替え、建物を出る頃には日はもう暮れかけていた。
スマートフォンで時刻を確認すると、スタジオを出てから30分が経過していた。
向かいの建物から伸びた影が、杏奈を闇にすっぽりと飲み込んでいるような気がして、ぶるりと身震いがした。
『杏奈ちゃんくらいの年頃の読モさんたちが何人か行方不明に……』
先ほどの丸谷の言葉が脳内にこだまする。
「急ごう」
杏奈が小走りに駆けだそうとしたその時だった。
「杏奈ちゃん!」
たった今出てきた建物の中から、杏奈を呼ぶ声がした。
振り返ってみると、背の高い、すらりとした体躯の好青年が杏奈に向かって手を振っていた。
その男性を見た瞬間、杏奈の心臓が大きく1つ音を立てた。
最初のコメントを投稿しよう!