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「くぁああ、目ぇ痒い!!」
風呂上がり鏡を覗き込む彼女の目は真っ赤だった。この時期、スギ・ヒノキの猛攻が落ち着きを見せた所に新たな刺客ブタクサの登場。つまるところ、彼女は花粉症だ。
「ぉお、目、真っ赤だし。眼球取り出して洗いたいって気持ちがちょっと分かる」
今までこれほどの目の痒みを覚えた事はない。酒を飲んだり、風呂に浸かって身体を温めたり血行が良くなれば痒みと言うのは突然に現れる。一度掻くと連鎖的に色んなところが痒くなる。そして、仕方なし抗アレルギー剤を呷ると気付いたらいなくなっている、その位だった。
「にしても、最近痒すぎか」
真っ赤な目をしばしばと瞬かせ、ドライヤーで髪を乾かし、冷風に変え髪を冷やす。髪が熱をもってると寝癖が付くんだと、どこかのニュースアプリで見た。パジャマのボタンを留めて寝室に向かい、ベッドに転がる。
「なんだかなぁ……」
納得はいかない。スマホアプリのゲームを開き、色をあわせて消してみたり問題解いたり色々やってみるが、そう言うときは大抵上手く行かないものだ。
それから昔ハマっていたゲームの攻略本を引っ張り出して読んで、設定資料集なんかの美麗なグラフィックを愛でたりして悶々と時間を潰し、ふと目を閉じる。そして、布団を頭からかぶり一つため息を吐いた。
ふと、昼間の妹の言葉が暗闇に木霊した。
『マジ姉者、男運悪りぃ、ワロス』
森山華、彼女は今日失恋したのだ。
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