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「ここだ。さっさと入れ」
連行され着いた場所は、鋼鉄でできているらしき建物。警備は厳重なようで、質素な内部は寒々とした冷酷な印象をオレに与える。
「テレビないんすか?最近の刑務所は優しい造りって聞きましたけど」
ドカッと連れてきた兵士がオレを牢屋の中へと蹴り飛ばす。
「……ずいぶん乱暴っすね。あの女への待遇とはえらい違いだ」
ガチャンと牢屋の鍵が閉められ、兵士は無言のまま立ち去った。
「随分活きがいいのが来たな。こんな、ぶつくさ文句を言うような輩に会うのは3年振りか」
牢屋の奥の方から、一癖も二癖もありそうなおっさんが現れた。少し白髪混じりで、パッと見は人の良さそうなおっさんだが、メガネの奥の眼はギラついている。
「……アンタは?」
「私はただの好好爺さ。ちょいとオイタをしてね。逃げられなくもなかったんだが……あまり来ることのない場所だからね。せっかくだからと、色々見て回ってる所だよ」
「答えになってない気もするが……要はわざと捕まって、内部を探ってるって認識でいいのか?」
「ハハハハ!まあ……当たらずとも遠からず、といった所か。中々鋭いじゃないか、キミ」
「そりゃどうも」
男に誉められたって、ちっとも嬉しくないがな。せめて同い年の女に……。
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