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「なあ、勝吾!」
俺は後ろから聞こえた佐々木佐助の声に、振り向いて答える。
「どうした?」
「いや…あの…さ」
彼の視線がバチバチの二人の方へ向けられる。
…止めろってことかよ、
「ほっとけ。どうせすぐ稽古は始まる」
「で、でも…お前、清水さんと幼馴染なんだろ?
しかも、ロミオだし…」
「それとこれとは関係ない。小心者ティボルト」
俺はズバッと佐助を切り捨て、心の中でニヤつきながら二人を見つめた。
ああ。バカバカしい。
演技ごときでこんなにいがみ合ってさ。
だいたい、演出家は役者の指導者なんだろ?黙って聞いとけばいいものを…
しかし、演劇バカな鏡花は真面目な顔で対抗…しているわけではないとは思うが、対抗している。
さぁーて。どうなるかな…
「じゃあ、どう演技すればいいのよ!?
あんたの意思をはっきり伝えなさいよ!!」
「すみませんが、脚本を読んだらわかるはずの事実を、私はわざわざ言うほど優しくありません」
カッとした大島は、鏡花をバンと強く肩を持った。
しかし、その瞬間鏡花の演出家の仮面が外れ、怒りの色が見え始める。
「…私、何か悪いことをしましたか?」
彼女は眉をひそめて、頭を斜め25度傾けた。
これだから鏡花は危なっかしいんだ。
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