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仕事帰りに雨に降られ、鞄を傘にしながら雨宿り出来る場所を探していた。どこか丁度いい軒先でもないものかと辺りを見渡したとき、小さな古本屋が目に留まる。
高く積まれた本の山が、左右に分かれて入口を作っている、古めかしい洞窟のような古書店である。
立ち読みでもしながら雨脚が弱まるのを待とう。そんなことを考えながら、私はその店の中に入った。
音楽もかかっていない、明かりも弱い、本の匂いだけがする店内。
奥のレジに店の主人らしき人影がなければ、営業しているかどうかもわからないような場所だった。
狭いが見通しはよいので、主人が私の存在に気付かなかったはずはないが、彼は挨拶をすることもなく沈黙を守っている。
そういう店なのだろう。日頃、過剰な接待を煩わしく思うことが増えていた私にとって、この薄暗さと静けさは好ましい。
湿気と本の匂いの中で、雨音に耳を傾けながら、気になる背表紙を探す――が、そこで私はたじろいだ。
意味のわかる言葉が一つもない。
もしかすると洋書専門の店だったのかと思うが、英語すら見当たらない。
動揺して目を逸らしたところで、店先に出ている『呪いの本屋』という小さな看板を見つけてしまった。
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