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呪い……。
いくらなんでも、と思うものの、ひたすら意味の分からない文字が敷き詰められた光景は、異様な説得力を持っていた。
それぞれ強い存在感の放つ本の中で、私はひと際目立つ、四角く角張った背表紙の本を見つける。
吸い寄せられるように手を伸ばし、指を引っかけて棚から抜き出してみると、それはずっしりと重い。冷たい金属製の装丁で守られた本だった。ページが開かぬよう、表紙から裏表紙の間を、短いチェーンが繋いでいる。
表紙や裏表紙の角には、薄っすら赤茶い色の液体の染みが付着していた。それが何なのか、あまり考えたくはない。
恐怖はあったが、好奇心が勝り、私はチェーンを解いてページを開いてみた。
「これは……」
そこにはびっしりと、赤い文字が敷き詰められていた。
しかも、他の本のような意味の分からない記号ではなく、明確に文字と読み取れるものが混じっている。
「――そちらは死の本でございます」
これが何を意味するのかを考えていたとき、レジにいた店主が口を開いた。
唐突に話かけられたことに驚きつつ、私は訊き返す。
「死って……あの人が死ぬの死ですか?」
「左様です」
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