第111話  誰一人欠ける事なく

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「別に居るくらい構わんぞ、相手まではできんがな」 「そう……じゃあ気の済むようにさせてあげて」 涙ですっかりグシャグシャになってしまった、もう一人の娘の顔。 せっかくの美人なんだから、そんな顔はするんじゃない。 涙を拭ってあげたかったが、もはや腕をあげる事すらできなかった。 これでも昔は敵兵を楽々吹っ飛ばしたもんだが、情けない話だな。 ーーねぇ、おとさん。何してるの? ええとね、おとさんは今、大切な人を待ってるんだよ。 ーーおくれちゃうよ、はやくいこう? そうだなぁ。もう少しだけ待っててよ。もうすぐだからさ。 ーーもうすぐって、どれくらい? もうすぐは、もうすぐだよ。遊んでるうちに終わってるよ。 ーーそれじゃあシルヴィアとあそぶの。アリさんあそびするの。 お、いいねぇ。最高にクールな遊びじゃん。 ーーそうなの、くーるなの。じゃあいくね? あーりーさん。 アリさんさぁーん! ーーくるっとまわって、ワッショイショイ! ショオイ! ーーシルヴィアのかちぃ! おとさんよわーい。 うーん、シルヴィアは強いなぁ。オレも頑張ってるんだけどな。 ーーあ、おきゃくさんなの。シルヴィアは、ここでまってるの。 そっかぁ、いい子にしてるんだよ? また後でいっぱい遊ぼうな。     
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