第1話  森の中の出会い

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第1話  森の中の出会い

人里離れた森の中。 鬱蒼(うっそう)と繁るこの森は、滅多に人が立ち入ることはない。 なので虫の鳴き声、風が木々を揺らす音、そして僕の足音しか聞こえない。 まるで世界から隔離された気分だ。 悪夢に迷い込んだような錯覚を覚えるけれど、踏みしめる枯れ草の音がそれを否定する。 ーーこれは現実なのだ、と。 僕がこんな場所にいるのは、森に住むという魔王に会うためだ。 そして願い事を聞いてもらうんだ。 もちろん、話を聞いてくれる保証はない。 そもそも魔王なんて、この世にいるのかすら定かじゃない。 不安が形を変えながら頭の中を駆け巡る。 なにせ酒場で耳にした出所の怪しい噂だ。 根も葉もない与太話かもしれない。 そう思うと足が止まりそうになるが、僕に頼る宛なんか他にない。 僅かな希望を胸に走り続ける事を選んだ。
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