第2話  潜入 魔王城!

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それでもこんな状況でも、妹のミレイアのことは片時も忘れていなかった。 僕は最後の望みとばかりに、意を決して尋ねた。 「あの、お姉さんは魔王様……なんですか?」 廃墟やこの世の果てのような場所で聞くならまだしも、こんな安らぎ空間で聞くのは流石に失礼だったかもしれない。 不躾な質問のせいか、声がひどく震えた。 僕の問いに、すぐに答えは返ってこなかった。 言葉の代わりに香り豊かで暖かい紅茶と、僕には手の届かない高そうなお菓子が並べられた。 もてなしの対応が済むと、彼女はようやく答えてくれた。 「主人はもうじき戻るでしょう。それまで少々お待ちくださいな。お代わりもありますからね」 否定しなかった……。 ということはやっぱりここには魔王様がいるのだろうか。 主人と発言したのだから、この女性は手下なんだろうか。 凶悪さの欠片もない、町でも評判の美人さんという方がしっくりくるようなこの人が。 そんなお姉さんと二人きりで向き合っていると、なぜか落ち着かなってしまう。 気が動転してせっかくのお茶の味もわからない。 それでも水分補給をと思いながら、乾いた喉を潤していた。 事態が動き出したのは、その紅茶を飲み干した頃だ。 入り口が随分と騒がしくなる。 金属が擦れる音、重量感のある足音、そして言い争う声。 さっきまでの静けさとは雲泥の差だ。 まず銀の甲冑に身を包んだ赤毛の女性が入り、その女性と口論をしながらローブを着た茶髪の女性が入り、 そして最後にふてぶてしく、不機嫌そうな若い男が入ってきた。 この中に魔王様が、居るんだろうか? 結論から言うと、この時の予想は的中していた。 不機嫌の塊のような男こそこの家の主であり、魔王の称号を持つもの。 彼を知る者は、こう呼ぶらしい。 豊穣の森の魔王、アルフレッドと。
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