2.自殺志願者専用遊園地

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「自殺志願者に対して、こんなに手厚い制度があるのって、この国だけなんだよね?」 シュウは、そう言って話に加わった。 窓の外を、延々と続く山並みが流れていく。 道路脇の川の水面(みなも)に、キラキラと陽の光がきらめいているのを眺めながら、シュウはさっきコンビニに寄って買ったチルドカップのコーヒーを、一口すすって飲み込んだ。 ちょっとぬるくなったコーヒーは、べたりと舌に甘かった。 「そうだぞー。ほかの国だと、自殺志願者は支援なんて受けられなくて、自分で首を吊ったり、ビルの屋上から飛び降りたり、手首を切ったり、線路や川や海に飛び込んだりしなきゃならないんだ」 「うへえー、ぜんぜん楽しくなさそう……」 「そのとおり。制度ができるまでは、この国でだって、自殺はただひたすら苦しくて、つらくて、痛いだけのものだったんだから」 いい時代になったもんだ。と、父と母はまたうなずき合った。
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