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やがて、山あいを走る車は、トンネルに行き着いた。
長いトンネルだった。
それを抜けると、道の先は下り坂になっていて、坂の下には街が広がっていた。
車は街へは向かわずに、別れ道を曲がって山裾を走る。
そうしてしばらく行くと、ほどなくして、山の上にある大きな観覧車が見えてきた。
シュウたちは、おお、とか、わあ、とか思わず声を上げた。
「あれが、ぎんいろ三日月ランドの観覧車?」
シュウは、ほかの三人のうち誰にともなく尋ねたが、それは尋ねるまでもないことだった
なぜなら、観覧車の正面には、ここからでもよく見える銀色の三日月が飾られていたからだ。
「あの三日月、観覧車に取り付けてあるのかな?」
「うーん……動いてる? 観覧車といっしょに」
「いや……観覧車は動いてるけど、三日月は回ってない、みたい」
「だよね。三日月の尖ってるとこ、ずっと真上と真下にある」
「なあんか、バランス悪く見えないか? もうちょっと、こう、三日月の上に座れる角度にしたくなんない?」
「なる、なる! 三日月のイラストとかオブジェって、そういう角度が多いもんね」
妹とそんなことを話している間に、車は遊園地の入口に到着した。
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