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「やっぱり、ここにはチケット売り場ってないんだね」
「そりゃあそうだよ。この遊園地に客として入れるのは、国からチケットを配布された人間だけさ」
「ねえ、ねえ。アトラクション、なんにする?」
「そう慌てないで。いくつもは乗れないんだから、ゆっくり園内を回って選びながら、先に食事でも、ね」
シュウたち一家はそんなことを言い交わしつつ、園内の奥へと入っていく。
と、そこへ。
唐突に、マイクを通した声が響き渡った。
『はーい! ガイドが必要な方は、こちらにお集まりくださいねー。これより、当遊園地【ぎんいろ三日月ランド】のアトラクションについてご説明させていただきまーす』
声のほうを振り向くと、そこには〈死神〉がいた。
真っ黒なローブに、大きな鎌。
噂には聞いていたが、ぎんいろ三日月ランドの園内で働く従業員は、本当に死神の扮装をしているのだ。
行こうか、と、シュウたちはそちらへ向かって歩き出した。
入場ゲートの近くにいたほかの客たちも、死神姿のガイドのもとへ、みんなぞろぞろと集まっていく。
ある程度人が集まったところで、ガイドは「はい、それでは」と話を始めた。
『えー、皆さんご存じのとおり、この【ぎんいろ三日月ランド】は、自殺支援制度の実施に伴って全国十三ヶ所に創設された、自殺志願者専用の遊園地です!
園内には、楽しく自殺するためのアトラクションが豊富に取り揃えてありますので、どうぞみなさん、どれでもお好きなアトラクションをお選びください!』
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