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「僕――観覧車にしようかな」
大きな三日月が飾られた観覧車を見上げて、シュウは言った。
園内のどこからでも見える大観覧車は、単に目に入る頻度が多いためか、遊園地の象徴ともいえる風景であるためか、数あるアトラクションの中でもひときわ印象深く、シュウの気持ちを惹きつけた。
パンフレットによると、アトラクションの正式名称は【三日月と霧の大観覧車】。
〈安楽度〉90%
〈幻想度〉50%
〈興奮度〉と〈遊楽度〉はパーセンテージなし。
致死時間は約5分。
必要なチケットは1枚。
――となっている。
「あら、もう決めちゃうの」
「観覧車かー。〈興奮度〉も〈遊楽度〉もないし、つまんなそうじゃない?」
「まあ、いいじゃないか。シュウがそれでいいならさ」
ということで、四人が向かう最初のアトラクションは、シュウの選んだ観覧車となった。
「観覧車もよさそうだね。でも、私はもうちょっと考えてから決めようかな」
「私は、こういう大人しいのより、もっと派手なやつのほうがいいや」
「俺は、何か絶叫系にするつもりだから」
ほかの三人は、そんな感じでまだアトラクションを決めかねていたので、観覧車に乗るのはシュウ一人だ。
ただ、自身も〈安楽度〉の高いアトラクションを選ぶつもりだという母は、
「もしなんなら、私もいっしょに乗ろうか?」
と、搭乗口の前でシュウに言った。
「ううん、大丈夫。母さんも、気が済むまで選んでから決めなよ」
シュウはそう答えて、母に、そして父と妹に、手を振った。
「一応、観覧車が一周するまで、ここで待ってるからな」
「うん、ありがと。……それじゃ」
こんなふうに見送られるのを、シュウは少し照れくさく感じつつ、三人に背を向けた。
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