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50%の〈幻想度〉は、いったい何によるものなのか。
パンフレットのアトラクション概要でも、そこには特に触れられていなかった。
数分後に噴き出す毒の霧には、いくらかの幻覚作用でもあるのだろうか?
それとも、ゴンドラ内を霧が満たす様が幻想的だから、ということだろうか?
(“そのとき” になれば、わかるかな)
シュウは大きく息をついた。
心臓は、相変わらずドキドキしている。
窓の外の景色に目をやる。
シュウの乗ったゴンドラは、もうだいぶ高いところまで昇ってきていた。
「うわあ、すごい見晴らし」
観覧車からは、山を下った先に広がる街が一望できた。
それを眺めていると、なぜだか、胸の内に非現実感が吹き込むような心地がした。
そこにあるのは、これといってどうということのない、ありふれた街の景色でしかないというのに。
自分の住んでいる――住んでいた街と、たいして違いもなさそうな。
シュウは、景色から目を離して、座り直した。
巨大な三日月の先端が迫る。
もうすぐ、昇り切る。
観覧車の頂上に来るのが、シュウの乗っているゴンドラの番になる。
シュウは軽く姿勢を正して、目を閉じた。
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