3.ど・れ・で・し・の・う・か・な

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「えーっと。それでは、お客さま、どうなさいます? お客さまのチケットはまだ三枚残っておりますが。続けてもう一回、このアトラクションに挑戦なさいますか? それとも――あっ、ちょっと失礼……」 係員は、シュウを置いて、また観覧車に近づいた。 真っ黒なそのローブの後ろ姿を、シュウはぼんやり見つめる。 下りてくるゴンドラ……薄い霧を閉じ込めたそのゴンドラの中に、人の影が見える。 動かない人の影。 今度はその人を降ろすのかな、と思いきや、係員はそのゴンドラの扉を開けずに見過ごした。 (あれ? あのゴンドラに乗ってる人、もう一周するのか? ――もう一周、させられるのか? もう動いてないのに?) しかし、その次に降りてきたゴンドラは、係員によって扉を開けられた。 今度は、そのゴンドラの中に霧はなく、男女二人組の乗客がはっきりとした色で見えた。 係員は動かない二人を手早くゴンドラから降ろし、もとどおり扉を閉めた。 そこで、シュウは気がついた。 係員が扉を開けたゴンドラには、緑色のランプが点いている。 係員が開けなかったさっきのゴンドラは、たぶん、赤色のランプが点いていた。 ははあ、なるほど。 おそらくこの観覧車、基本的に――ハズレ以外は――同じ人を乗せたまま、二周するのだ。 一週目で、中の乗客は霧で死ぬ。 でも、霧が残っているゴンドラを開けたら係員の人まで毒の霧を吸い込んでしまうから、そういうゴンドラはまだ危険で、赤ランプなわけだ。 で、死体を乗せてもう一周している間に、ゴンドラ内には毒の霧を中和する薬剤でも撒かれるのだろう。 毒の霧が消えて安全になったゴンドラは、ランプの色が赤から緑に変わる。 そうすると、係員が扉を開けて中の死体を取り出すわけだ――……。 そんな推測を巡らせながら、シュウは観覧車に背を向け、ふらふらと歩き出した。
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