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チケットはまだ三枚残っている。
大観覧車はチケット一枚で乗れる。
もう一度これに乗ったなら、さすがに二回続けて〈ハズレ〉を引くことはあるまい。
しかし――。
搭乗口を出ると、そこで待っていた三人が、驚いた顔で言った。
「え? え? お兄ちゃん、どういうこと?」
「観覧車――乗ったんじゃないの?」
「の、乗ってたよな? 確かに。なんで、そのまま降りてきてるんだ」
そのまま。生きたままで。
くそっ、とシュウは三人から顔をそらした。
あんなふうに見送ってもらって、こうして待ってもらっていたというのに、〈ハズレ〉を引いて降りてきたなんて、格好がつかない。
「……それがさあ」
と、シュウは、力ない声で事情を説明した。
それを聞いて、三人もやや脱力したようだった。
「お兄ちゃん、運わるーい」
「そういえば、福引とかスクラッチとか、昔から当たらなかったもんねえ、シュウは」
「はは。まあ、ドンマイ! まだチケット一枚使っただけなんだから、大丈夫だよ」
「……うん」
父に肩を叩かれて、シュウはうなずいた。
「……うん、そうだよな。少ないチケットで乗れるアトラクションは、まだほかにもあるだろうし。……チケット四枚必要なやつには、もう乗れなくなっちゃったけど」
「うーん。チケット四枚のやつは、そもそも、どれもシュウの好みじゃないと思うよ? パンフレット見ると」
母にそう言われ、シュウは、今一度パンフレットのアトラクション一覧ページを確認した。
「なるほど。言われてみれば、そうかも」
「じゃあ、よかったじゃん」
と、妹は笑った。
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