3.ど・れ・で・し・の・う・か・な

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カップから毒液を抜いて、死体を降ろして、液に濡れたカップの中を清掃しなければならないこのアトラクションは、一回動かすと、次の客を乗せるまでの準備に時間が掛かるのだ。 今、ようやく清掃まで終わったようで、係員が「お乗りのお客様はどうぞー」と呼びかけている。 「それじゃ……」 と、母は、持っていたバッグからチケットを取り出した。 それから、「あ」と何かに気づいた顔になり、少し迷うように父のほうを見た。 「えっと……。このアトラクション、致死時間が二十分で、けっこう長くなっちゃうんだけど。……あの」 「ああ、大丈夫。二十分くらい、もちろん待ってるって。閉園まではまだ充分時間あるから、心配いらないよ」 父は、笑顔でそう答えた。 「そう? ありがと」 母も笑みを返し、「じゃあ、行ってくるね」と、父に背を向けつつ手を振った。 シュウと妹にも、何度も何度も手を振った。 シュウは手を振り返しながら、ずっと同じ笑顔を浮かべているのはつらい、と思った。 写真撮影で、なかなかシャッターが下りないときにも似たつらさだ。   やがて、母は手を振るのをやめ、係員にチケットを切ってもらった。 そうして、柵の向こう側へと入っていった。
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