3.ど・れ・で・し・の・う・か・な

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ほどなくして、辺りにコーヒーと紅茶の香りが漂い始めた。 キャラメルや生クリームやシナモンの香りもそこに混じって、アトラクションのそばにいるだけで、シュウは口の中が甘くなりそうだった。 お菓子の国にいるみたいだ。 いや。不思議の国のお茶会だろうか。 (このアトラクション、〈幻想度〉はパーセンテージなし、なんだよな) そのことに、シュウはふっと引っ掛かりを覚えた。 この【まどろみティータイム】と同じく「眠りながら死ねる」タイプのアトラクション、【三日月と霧の大観覧車】は、〈幻想度〉が50%だった。霧が出てくる以外はなんの変哲もない、普通の観覧車だった、あのアトラクションが。――あの薄い霧だけで、〈幻想度〉が50%? どうもよくわからない。 こっちの【まどろみティータイム】のほうが、よほど幻想的な雰囲気のあるアトラクションな気がするけれど。 やはり、観覧車の霧には、オプションとして幻覚作用でも付いていたんだろうか?  自分の乗ったゴンドラは〈ハズレ〉だったから、それを体験できなかっただけで。――そうでも考えないと腑に落ちないよな、とシュウは思った。
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