159人が本棚に入れています
本棚に追加
四つの封書に入っていた診断書の文面は、名前の部分以外ぜんぶ同じだった。
つまり、シュウも、父も、母も、妹も。
今年の検査では、家族四人がみんなそろって自殺志願者という結果だったのだ。
こういうことは、わりとよくあるらしい。
診断書を取り出した封筒の中には、まだ何かが入っていた。
ずしりと重たい板状の金属。
封筒を斜めに傾けると、それは重みで滑り出て、あっけなく手の平の上に落ちてきた。
【 ぎんいろ三日月ランド 】
金属板の表面には、そんな文字が彫られていた。
それがなんであるのか、シュウはもちろん知っている。
父も、母も、妹も、当然知っている。
例の遊園地のチケットだ。この目で見るのは初めてだった。
『つきましては、同封のチケットをご持参の上、チケットの使用期限内に、最寄りの「ぎんいろ三日月ランド」までお越しください。』
診断書の続きにはそう書かれていた。
シュウはもう一度チケットに目を落とし、使用期限日を確認する。
そこに彫られている日付けは、今日から一週間後のものだった。
想像してたよりもけっこう短いな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!