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2.自殺志願者専用遊園地
一昔前まで、自殺というのは良くないものだという風潮があった。
けれど今では、国の政策の一環として、自殺志願者のための支援制度がある。
自殺支援制度。それがすなわち、例のチケットの配布だ。
全国一斉検査によって自殺志願者と診断された国民には、国からそのチケットが送られる。
【ぎんいろ三日月ランド】という名の遊園地。
自殺志願者になったら、そこへ行く。
病気になったら病院へ行くのと同じことだ。
自殺支援制度が実施された当初のことを、シュウはうっすらと覚えている。
当時はたぶん、世間には戸惑いと不安の声が溢れていて、制度に対する大規模なデモが各地で起こっていて、それがしょっちゅうニュースになっていた気がする。
シュウも、テレビなどで制度の話を聞いて、幼心に「そんなの、なんか、おかしいんじゃないのかな……」と思っていた。
けれど結局、全国一斉検査もチケットの配布も、今では当たり前のことになっている。
だから、心配することなんて何もなかったのだ。
あれから十年経っても、こうして問題なく制度は続いているわけだし。
やっぱり、あの頃、制度賛成派が言っていたとおり、一部の心配性な人たちが過剰に騒いで反対運動をしていただけだったのだ。
今ではもう、自殺支援制度に抗議するデモが起こったなんて話もぜんぜん聞かない。
反対派の人たちもいいかげん気がついたのだろう。
そこまで心配するほどのことでもなかったんだ、と。
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