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シュウは、なんだか妙に気まずくなって、目を伏せた。
「……島雨さん。ハンバーガー、食べないんですか?」
「……ああ」
言われて思い出したように、島雨は、ようやくトレーの上の海老カツバーガーに手を伸ばした。
「海老カツバーガー、好きなんですか?」
「まあね」
「冷めちゃったんじゃないですか? それ。……新しいの、取ってきます?」
「いや、別に」
「でも……」
もったいない。どうせなら、作りたてのあったかいバーガーを食べればいいのに。
これが最後の食事なのだから。
「僕は……何かもうちょっと、取ってきますね」
そう言って、シュウは席を立った。
甘いチュロスを完食したら、今度はもうちょっとちゃんとした食事がしたくなった。
カウンターの前でしばし迷って、注文する。
最後の食事――ということを考えると、どうしても普段以上に悩んでしまったが、最終的にはカレーライスに落ち着いた。
何を食べるか迷ったときは、カレーを選んでおけばだいたい間違いないと思う。
席に戻ってくると、島雨はすでに海老カツバーガーとクラムチャウダーを食べ終えて、ぼんやりとイルミネーションを眺めていた。
トレーをテーブルに置いて、シュウは席に着く。
島雨が、振り返って「おかえり」と言った。
ただいま、と返すのも何か変な気がして、シュウは黙ったまま、プラスティックのスプーンでカレーとライスの境界線をかき混ぜた。
そうして、二、三口カレーを食べたあと、シュウはふと顔を上げた。
「島雨さんは……このあと、どうするんですか?」
「どう、って?」
「え? いや。……アトラクション」
それ以外に何があるというのだろう。
わかりきったことをわざわざ聞き返されて、シュウは少し腹が立った。
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