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「もう、閉園まであんまり時間もないし。島雨さんは、何を選ぶのかなって……」
「俺は、何も選ぶつもりはないよ」
「……え?」
思わぬ答えに、シュウは耳を疑った。
アトラクションを「何も選ぶつもりはない」?
そんなわけにはいかないだろうに。
第一、それなら、なんのためにここへ来たのかわからないじゃないか。
島雨はいったい、何を考えているのだろう。
怪訝に思いつつ、シュウは黙々とカレーライスを口に運んだ。
一口一口、味わって、噛みしめて、ゆっくりと食べた。
しかし、そうやって時間を掛けて食べたのに、シュウのカレーの皿が空になっても、島雨はまだ動こうとしなかった。
――本当に、アトラクションを選ばないつもりなんだろうか。
(もし、最後までアトラクションを選ばずにいたら……どうなるんだ?)
疑問を抱きながら、シュウもまた、島雨の向かいで席を立たずにいた。
閉園時刻が、各アトラクションの最終受付時刻が、迫っているのに。
もうすでに最終受付時刻を過ぎたアトラクションもあるだろう。
ここでぐずぐずしていればしているだけ、アトラクションの選択肢は狭まっていくのだ。
早く、自分のためのアトラクションを選ばないと……そうしないと、この遊園地に来た意味も甲斐もない。
それは、わかっているのに。
なのに、ここにきて。
どのアトラクションがいいか、考えても考えても決まらない。
考えれば考えるほど、どうするべきかわからなくなっていく。
時間はどんどん過ぎていった。
そうして。
シュウがアトラクションを決められないまま、やがてまた時報が響いた。
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