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死神の従業員に案内され、しばらく歩いてたどり着いたのは、遊園地の敷地内にある小高い丘の上だった。
そこには小ぢんまりとした駅舎を模したレトロな建物があり、建物の前には線路が敷かれていた。
死神に付いて〈駅舎〉に入ると、そこには十人ほどの人々がいた。
〈改札〉の外のホームには、さらに多くの人々の姿がある。
合わせて何十人くらいいるのだろう。
彼らもまた皆、この時間までアトラクションを決められずにいた客のようだった。
『間もなく、列車が参ります……間もなく、列車が参ります……。お乗りの方は、ホームに出てお待ちください……』
駅舎の雰囲気に合わせたような、やけに音質の悪いアナウンスに促され、まだ改札のこちら側にいた人々が一人、また一人とホームに向かう。
シュウと島雨も、彼らに続いた。
改札をくぐるとき、係員にアトラクションチケットを渡すよう言われた。
シュウの手持ちのチケット六枚は、そこですべて残らず回収された。
それによって、シュウはなんとなく察した。
このアトラクションには、おそらく〈ハズレ〉は存在しないのだ、と。
ホームに出て待っていると、アナウンスどおり、すぐに列車がやってきた。
駅舎によく似合う、レトロなデザインのトロッコ列車。
その窓にガラスは嵌っていなかったが、ただ、客車のすべての窓は鉄格子で塞がれていた。
列車がホームに停まり、客たちはぞろぞろとそれに乗り込む。
すぐそばで、従業員の持つ鎌が電灯の光を反射していた。
シュウも列車に乗り、特に申し合わせたわけではなかったが、二人掛けの座席に島雨と並んで腰を下ろした。
窓側にはシュウが座った。
車内の天井から、例によって、何台もの監視カメラが乗客たちを見つめていた。
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