5.アラーム

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「……ちょっと、落ち着かないですね。……カメラ」 シュウは、島雨に話しかけたつもりだった。 けれど島雨は、聞こえていないのか、それともわざと無視しているのか、何も反応を示さない。 「……この遊園地、監視カメラ、多すぎですよね」 少し気まずさを覚えながら、それでもシュウは、隣の席に話しかける。 「まあ、こんな場所だから、カメラも必要なんでしょうけど。でも、それならそれで、せめてもっと隠しカメラみたいにしてくれてればいいのに……。性能のいい小型カメラなんて、今時いくらでもありますよね。なのに、こんな、これみよがしな――」 「――これみよがしに目立つカメラを置いとけば、客の意識はそっちに向くだろう?」 島雨が言葉を返したので、シュウは口をつぐみ、隣を向いた。 「ああいった、いかにもな監視カメラとは別に、盗撮用の隠しカメラも、この園内には大量に設置されてると思うよ。俺はいくつか見つけた。……ここにもね」 と、島雨は、前の座席を指差すように手を伸ばし、いくつかあるネジのうちの一つに人差し指を押しつけた。 島雨が指を離すと、確かにそれはネジではなく、ネジの中に紛れ込ませた小さなレンズらしきものだった。 スピーカーが、短いノイズを鳴らした。 音質の悪いチャイムが響き、それに続いて、やはり雑音混じりのアナウンスが流れる。 『本日は、23時55分発の【最終列車】にご乗車いただき、まことにありがとうございます。……この列車は、午前0時ちょうどに、崖下へと転落いたします。……なお、この列車は、〈幻想度〉50%、致死時間約5秒のアトラクションとなっております……』 シュウは、思わず時計を確認した。 列車の中には、ちゃんと大きな目立つ壁掛け時計があった。 きっと、間違いのない正確な時計なのだろう。 そのあとも、五分ごとに同じアナウンスが繰り返された。 そして、何度目かのアナウンスが流れたあと、いよいよ列車の出発時刻となった。
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