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4.リトルゲート
家族がみんな自殺を終え、一人最後に残されたシュウは、しばらくぶらぶらと園内を歩き回った。
アトラクションが、決まらない。
本当は、やっぱり観覧車がいちばん好みだった。
あれが良かったのに。家族の誰より先にアトラクションを選んだのは、自分だったのに。
――それなのに、あそこで〈ハズレ〉を引いたせいで、なんだかケチが付いてしまった。
もう一回あの観覧車に乗る気にはなれない。
あてどなくうろついているうちに、いつの間にか、園の端のほうまで来てしまっていた。
そこは、アトラクションも売店もない場所だった。
あるのはただ、手入れの行き届いていない花壇や木々、それらの間を縫うように延びる雑草の生えた遊歩道だけだ。
町の外れならぬ、遊園地の外れといったところ。
――外れ。はずれ、か。
シュウは、あと三枚残っている金属板のチケットを握りしめた。
こんなことをしている場合ではない。
早くアトラクションを選ばなければならないのに。
ちゃんと納得いくものが見つかるまで、じっくり選びたいのだ。
時間ギリギリになって、適当に飛び込んだアトラクションで自殺するなんてごめんである。
そんなの、この遊園地に来た甲斐がない。
アトラクションのある場所に、戻らないと。
……でも。
ちょっとだけ。まだ、時間はあるのだから。
この園内の空間は、いったいどこまで続いているのか。
いちばん端は、行き止まりは、どうなっているのか。
そのことが、なんだか急に気になり出してしまった。
好奇心を満足させて、それから戻ったって、遅くはない。
そう思い、シュウは遊歩道のさらに先へと進んでいった。
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