がんじがらめの恋をする。

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 オメガは希少種でありつつも、その性質ゆえに社会で活躍する機会は少なかった。雇用してくれる会社はあるにはあるのだが、家庭に入ることを望まれることが多い。謂わば、厄介払いだろう。いくら薬があるといっても、オレのようなフリーターが多いのもそういうことだし、劣等感に押し潰されそうになるのもそうだ。『発情期(ヒート)』を持つオメガだからこそ働き口が限定されてしまうし、疎まれてしまう。そして、疎まれる理由はなにも発情期を持つことだけに限らない。確固たる別の理由がある。――優位種のアルファが関わることであるからして生まれる感情はアルファに向かうことはなく、オメガに向かうわけだ。まあ、オメガはそこに強い優越感を覚えるようなので、実際はお互い様かもしれない。  なぜオメガ性についてこんなに詳しいのかと言えば、オレ自身がオメガだからだ。中学生になる前に『第二性オメガ判定』について一通りさらりと習い、中学生になれば学校ごとに検診を受けて、判明した『第二性』についてそれぞれがより詳しく教育を受けるのがごくごく一般的なことである。プライベートなことなので個人に伝えられるだけで公にはならないが、アルファやオメガであった場合は学校を通じて家族に伝えられていた。のちの人生に関わることでもあるし、なによりオメガには避妊薬や抑制剤の問題もあるし。そもそも、たとえ公にされなくとも、お互いの第二性はフェロモンで解ってしまうのだけれども。本人がどうしようにもどうにもならない本能的に。――黙っていたってすぐに解る。一応一通り習ってはいるからか、ある程度は理解できているので問題はないし。それでも個人にしか伝えられないのは、配慮ゆえだ。個人情報保護がうんたらかんたらとうるさいし。  あー、いや、アルファの場合は学校をあげてのお祭り騒ぎになっていたけどね……。全校集会で表彰されていたもんなー。周りの反応をよそに、本人は興味がなさそうだったのが印象深い。そりゃあまあ、生まれながらのエリートでは表彰される数も違うんだろうけどね。
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