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「……まぁ、少し。可愛い何て言われ慣れてないし」
「はは、その照れてるのも可愛い。」
どうした?
私に可愛い何て、彼じゃないみたい。
やっぱり花火の影響か?
いつもと違う彼に、さっきから私はドキドキさせられっぱなしだった。
「じゃあ……もっと照れることしてやろうか?……逃げるなよ?」
夜空を彩る、と言う程の大層な花火ではないけれど、それが視界から突然消えた。
と言うか、私の視界には彼しか居なかった。
唇に柔らかいものが触れる。
それが彼の唇だと、分かるまでに随分と時間が掛かったような気がした。
分かってからすぐに身を引いたのに、彼の腕は思いの外力強く、なかなか振りほどくことが出来なかった。強張る肩が更に縮む。
彼の顔があまりにも近くて直視できずにぎゅっと目を瞑った。
……少し怖くて、彼の肩を押し返すのに、びくともしない。
女の子みたいな顔してるのに……彼はきっちり男の子で……。
そのぎこちなくて不器用なキスが私の心臓を壊してしまいそうだった。
了
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