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-uno side-
彼と目が合った瞬間、気まずい空気が流れた。
本当は怒りたかったけど、周りも、隣にいる千晃すら気づいてないし…。
何より、女子から人気のある西島くんと絡むとろくなことなさそうだし、揉め事とか面倒だし。
行き場のない怒りと不安が入り混じり泣きそうになる。
「っごめん!」
私が下を向いていたら、聞こえてきた声。
顔を上げると、西島くんが頭を下げていた。
驚きのあまり固まっている私の手元を覗き込んできた彼。
西「うわ、線……。まじでごめん。ってか、すげー。めっちゃうまいね、絵。」
嬉しそうに話しかけられ、ますます驚いてしまう。
今まで、千晃にしか絵を見せたこともないし、褒められたこともなかったから。
西「ほんと、ごめんなさい。」
もう一度頭を下げられ私はようやく、ううん、大丈夫。と言った。
描き直すのは辛いけど、頭を下げられるのは慣れてないし
黙っているのは申し訳なかったから。
西「もし俺に手伝えることがあったら言って。絵は下手だけど、他のことでも返すから。」
こんなにも西島くんが、まっすぐに接してくることに驚いた。
地味な私にも、他の女の子と同じように接してくれることに。
宇「うん、ありがと。」
男の子と話すのは、高校に入ってから初めてのことだった。
怒りも悲しみもあったけど、絵を褒めてもらった嬉しさや、初めて気づいた西島くんの優しさに心が温かくなっていることが自分でも驚いた。
ふと視界に入った窓の外。
今日は晴れていて、いつもよりも暖かく感じた。
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