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大切な人
-Uno side-
伊「ねぇ宇野ちゃん。もしさ、もし…。」
宇「ん?なに?どうしたの?笑」
何かを言いかけて黙る千晃。
伊「…ううん。やっぱなんでもない。」
宇「なにそれ笑」
伊「へへっ。ごめんね。」
何かを言いたそうな千晃。
心なしか瞳が震えている気がした。
だけど私からは聞かない。千晃は自分の中で考えてることがあると思うから。
私が悩んでる時も、千晃はなにも聞かずただそばにいてくれた。
それだけで安心できた。
いつも千晃に支えられ毎日を過ごしてきた。
伊「宇野ちゃんはさ。人と関わるのはまだ怖い?」
お弁当の具材を口いっぱいに頬張りながらそう聞く千晃。
宇「…怖いといえば怖いかな。」
伊「そっか。」
宇「うん、けどね。話すことくらいなら、できる気がするよ?」
伊「…男の子とも?」
宇「うん。今日ね、高校入って初めて男の子と話したんだ。」
伊「…へっ。いつ?」
宇「美術の時。私が絵描いてたら、いきなりぶつかられてね。」
それから私は今日あった出来事を全て千晃に話した。
伊「へぇー。全く気づかなかった。そんなことがあったんだねー。」
私は男子どころか、同じ女子でさえも苦手。
それを知っているのは、小学校、中学校、高校とずっと一緒にいる千晃だけが知っていること。
伊「そっか。宇野ちゃんも少しずつだけど前に進めてるんだね。」
そういった千晃はどこか寂しそうに、儚く笑っていた。
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