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早瀬が自分の横に置いてある手の平大の桐箱を手に取り恭しく美里の前に置き、白い絹の紐を結び解いた。
「お前も話には聞いたことがあるだろう。」
早瀬の手が箱の蓋を持ち上げた。
桐箱には予想通りに白い勾玉が鎮座してある。
「勾玉……」
その昔、深山家と呼ばれる裏の陰陽師がいた。彼らは京の闇に根付いていた。
その中で《星》と呼ばれる勾玉が存在していた。
十三の勾玉は京を護った。と伝え聞く。
そして、帝が帝都遷都の折り、十三の勾玉は帝都の神社仏閣へと奉納された。
月代神社にその勾玉が納められているとは聞いていたが、内にも外にも秘されていた為、美里は初めて伝説というか物語の中でしかなかった勾玉を見つめた。
勾玉があることは分かったけれども、一向に懐紙に記されている内容が飲み込めない。
「お祖父様……」
美里の先の言葉を遮るように早瀬は口を開いた。
視線は勾玉にある。
「お前は、桜姫に選ばれた。」
「…………は?」
口から出た声は掠れた。
桜姫とは、勾玉よりも伝説的な存在ではないか。
神国を護る桜の姫神。
永遠の時からこの神国を護っているという。
「この国は神の国だ。それは何故か分かるか?」
ひたり、と早瀬に見据えられ美里は背筋を正して言った。
「神がおわすからです。幾重もの結界がこの神国を護っています。」
早瀬は大きく頷いた。
「全ての結界が崩れ去れば日の本は終わるじゃろう。それを、させぬのが桜の姫神だ。美里、お前は桜の姫神をお守りしお慰めするのだ。……」
早瀬は、それから先の言葉を口ごもった。
伝えるべきか悩んでいる。
「お祖父様、行くからには何事も聞いておきたいです。」
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