第2章

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 芹澤の案内で、内幸町のオフィスビルの地下にある小さな和食の店に入った。七席ほどの小さなカウンターと衝立で仕切られたテーブル席が三つほど、新橋駅前の飲み屋ほどうるさくなく、銀座の店ほど気取っていない落ち着いた店だった。  店の一番奥のテーブル席に通され、三人で乾杯する。 「いやぁ、急にこんな席を設けていただいてすみません、ありがとうございます」 仕事を離れた三谷は先ほどよりもくだけた口調で芹澤に礼を述べた。芹澤も柔らかい表情で三谷と酒を酌み交わしている。 「井上さん、お酒は?」  「あまり多くは……すみません、弱いです」 飲めると誤魔化そうかとも思ったが、これから長い付き合いになるかもしれないと思い直し、本音を打ち明けた。 「無理しないで、好きなもの頼んでくださいね」  芹澤に優しく声をかけられ、歩は安心して頷き返した。  相変わらず目力の強い切れ上がった目だが、職場にいたときよりもまなざしが優しい。 「井上はね、たばこも吸わないし、酒も飲まないんですよ。それにこんな細っこいでしょう? 最初は営業できるのかと心配だったんですが」 アルコールが入って少し饒舌になった三谷が、歩の肩を叩きながらしゃべり始めた。 「意外とガッツがあって見た目と中身のギャップがあるんですよ。からだも丈夫ですし」  よろしくお願いしますね、と三谷が改めて頭を下げた。歩もそれに倣って小さく頭を下げる。 「ギャップがあるのは知ってます」  芹澤が意味ありげに呟いた。 「?」 「三谷さんが異動されるのは残念ですが、井上さんに不安は感じてません。先ほどの提案資料も要点がまとまっていてとてもわかりやすかった。先ほどは本当に、あまりにも知人に似ていたものですから……失礼しました」 「いえ」  困った顔で苦笑する芹澤は、仕事の時の鋭さが消え、いかにも女性にモテそうなイケメンぶりだった。日焼けした滑らかな肌がやはり歩とそれほど年は離れていないと思わせた。
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