第2章

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 ゲイ同士、仲良くしましょうとすり寄ってこられても困ると思っていたが、それ以上だ。初対面で、しかも仕事の取引先の相手をホテルに誘うなんて考えなしにも程がある。見た目がちょっとかっこいいと思っていた自分を殴りたい。  ビルとビルの隙間の街灯の明りが届かない小道で、先にあるピンク色の看板だけがぼんやりと明るい。視線はどうしてもそこに吸い寄せられてしまう。 「初めてクラブであなたを見て……」  芹澤の喋る言葉もぼんやりと遠く、語尾が消えてよく聞こえない。  クラブで踊っていると、ポールダンスをストリップと勘違いしている人間に出くわすこともある。服を脱げと野次られたり、帰り際に強引にナンパされたりする。  普段はそんな輩は相手にしない。客だったら適当にあしらう。  しかし先ほどまでビジネスの話をし、あまつさえ歩の仕事ぶりを褒めてくれた相手にそんな風に見られたのはショックだった。最初の印象が良かっただけにショックの度合いが大きい。 「俺はゲイで、クラブで踊ってますけど、」  平坦に声を出したいのにどうしても震えてしまう。 「ポールダンス踊っているからって誰とでも寝るだなんて思わないでください!」  芹澤の顔を見ないまま、肘を張って退路を確保し暗がりから飛び出す。ビジネスマンとして「失礼します」と挨拶だけはした。あとは振り返らずに走る。沸騰した頭の片隅で、杉谷法律事務所の担当は外されるかもしれないな、とやけに冷静に考えていた。
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