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毎週金曜日の夜、歩はここでポールダンスのショーに出ている。
まだ人がまばらなメインフロアの脇の階段を上がり、二階の楽屋の扉をノックする。
「おはようございます」
楽屋に入るとすでに三人のダンサーが支度の真っ最中だった。
「おはよう~」
野太い声の挨拶が返ってくる。今日のイベントはゲイナイト、ダンサーもすべて男だ。六畳ほどしかない狭い楽屋は、大柄な半裸の男たちと衣装と靴とで溢れ返っている。歩は床に転がるブーツや羽飾りをまたぎ、空いている鏡台の前に腰掛けた。
「おはよう、ユウ」
ダンサー仲間の滝川が隣の鏡台から鏡越しに挨拶してきた。すでにメイクを済ませたようで、スッキリとした眦に控えめなラインストーンが光っている。
「いいね、そのメイク。派手過ぎないけど、光るからステージ映えする」
さんきゅーと滝川が目を細める。滝川の一重の目は黙っているときつく見えるが、笑うと途端に色っぽくなる。その目元に光る石がよく似合っていた。
歩も服を脱いて身支度を始めた。と言っても私服の下に着てきた黒いショートパンツに太めのベルトを巻き付け、編み上げのブーツに履き変えるだけだ。メイクはいつもしていない。
「メイク要らずの美肌で羨ましいね」
滝川が人差し指の背で歩の頬をさらりと撫でる。他のダンサーたちも歩の頬を触りながらお前いくつだ、ひげは生えるのかなどとからかった。
ここで踊り始めて三年になるが、いまだに学生に見間違われる歩はいつだって末っ子扱いだ。
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