第1章

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 鏡を見るとそこには普段の歩と違う人間がいた。  日に焼けていない白い肌に銀色の瞳が人形めいている。光る石をちりばめたアイパッチが、ますますその顔を作り物めいて見せていた。  普段華奢だといわれる身体も、衣服を脱ぐとポールダンスに必要な筋肉を薄くまとって彫刻のようなしなやかな曲線を描いている。  ポールダンサーのユウだ。  学生時代にポールダンスに出会い、夢中で練習しているうちにクラブでショーデビューしていた。昼は会社員、夜はポールダンサー、忙しいが充実している。歩にとってはどちらも同じくらい大切な仕事だ。どちらも懸命に取り組み、どちらにも誇りを持っている。 「それでは今日も頑張りましょう」  年長のダンサーがまるで朝礼の挨拶のような生真面目な号令をかける。華美な衣装を身に着けたダンサーたちが表情を引き締める。  夜の仕事の始まりだ。
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