銀河鉄道の夜を読んだ夜に~終章~

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織姫と彦星は笑う。 「君らは天帝の庭園に勝手に入り、仙桃を盗み食いしたのだよ。君らが五十年、地球をさ迷ったのは、その罰だ」 彦星の言葉に二人は青ざめる。 「ごめんなさい!食べてみたかったんだ!」 織姫は、口元を隠してクスクスと笑った。 「確かに厳しい罰でしたね。でも、星の原の住民に五十年なんて一秒くらいですから。別に天帝は怒っちゃいませんよ。けじめを付けただけです。そして、仙桃が食べたいと言えば、いつでもくれるそうですよ」 ジョバンニとカムパネルラは、星のベッドの上で跳び跳ねて喜んだ。 「良かったー!仙桃も食べられる!」 「天帝、ごめんなさい!ありがとう!」 二人の声は、星の原の主、天帝に叫ぶだけで届く。 天帝の姿を見たものは星の原に誰もいないが、その存在はみなが知る。
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