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「…っ、今…なんと」
秀次が呆気にとられたような表情を見せる。
唐突な政宗の言葉に、意味を理解するまで少し時間がかかってしまったらしい。
ぽかんと口を開く秀次の容貌は、関白として威厳のある様とは遠くかけ離れているように政宗の目に映った。
「…私の従妹で、秀次様の許嫁である駒姫が、亡くなりーーー」
「秀吉様か?」
「え?」
「秀吉様が殺したのか?!」
秀次は、駒姫の死すら秀吉の手によるものだと思い、声高に叫んだ。
「私の許嫁を殺すなど!いくら秀吉様でも、黙ってはおれぬ!!」
「いえ、お駒は流行り病に倒れ、衰弱死―――」
「おのれ!秀吉様―――いや、秀吉め!」
自身が陥れられていることからすべてに対して疑心暗鬼になっている秀次には、政宗の言葉すら信用しようとはしなかった。
むしろ、駒姫の死ということの方が偽装であったのだが、秀次の中では自分を謀ろうとしているのだという疑惑への思いの方が強く、死の真相については最早さして問題にしていなかった。
「どうせ秀吉が、病に見せかけて毒を盛ったに相違ない!
やはり実子可愛さに、私を陥れ失脚させようとしているのだな?!
だが、そうはさせぬ!
許嫁を奪われ、地位も奪おうとするのなら、先に私が秀吉を討つーーーっ!」
「今の言葉、聞いたな?」
「ええ、間違いなく」
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