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「義…」
「言った通りでしたでしょう?!」
一心が名前を呼びかけた時、義光の隣に座っていた政宗が声を張り上げた。
「お駒の行方が分からなくなってから、俺の兵達に隈なく探させて回っていました。
それと同時に一心についても調べて回らせていたところ、最上の屋敷をうろついて回っている怪しげな忍を捕らえたのです!
口を割らせると、なんとこの男、定期的に一心から屋敷の情報を受け取っていた伊賀の忍だと白状するではありませんか!
そこから、一心がお駒の命を狙ってここへ潜り込んで来たことや、連絡が途絶えたことで里から様子を見に来られていたことが明るみになった。
俺が言った通り、この者は忍だったのです!
それも、お駒を殺すためにやって来た!!」
早口でまくし立てるように話す政宗は、怒りで顔全体が紅潮していた。
一心はすべてが義光の前で白日の下に晒されたことを悟り、唇をひき結んだ。
「おい、一心よ!
俺の言葉に何か一つでも相違あったか?
喋れる気力が残っているのだとしたら…いや、気力が無くとも言ってもらうぞ!
一体どういうつもりで義光様の元に何年も仕えていた?
義光様の信頼を勝ち取り、騙し通していたことで優越感にでも浸ったか?
そして自分が殺す相手に恋い慕われていたことにも、何の罪悪も抱かなかったのか?!」
政宗が問うと、一心は全てを覚悟し、姿勢を正した。
「俺は駒姫様を殺すために、今日まで生きてきました」
初めて一心本人の口から事実を聞いた義光は、深くうな垂れた。
「…そう、か」
やっとのことで、義光は口を開いた。
再び黙り込んだのを見た政宗は、怒りを露わにした。
「叔父上!あなたは何年にも渡り騙されてきたというのに、それだけしかかける言葉はないのですか?!
今すぐにでもこの者の首を斬り落としても、はたまた磔にしても足りぬ程の屈辱でしょう?!」
すると義光は、また力無い様子で口を開けた。
「一心…。一心は、どう思っていた?
お主が騙していたーーーお駒のことを」
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