運命の書

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「自分にとって夢の様なことが書かれていたとしてもそのことに驕り自分を見失えば運命は安易に暗転する。逆に自分に不都合なことが書かれていたとしてもそれを変えようとあがき続ければ光明が差すこともある。どんな理不尽な運命だったとしても、それを変えようと挑み続ければ変えられない未来などないということだ」 老爺の言葉に僕の頬をすっと一筋の雫が流れた。 「全てはお前さんの心次第というものだ。善き運命の旅を少年」 老爺はそう言って微笑んで見せた。 「はいっ」 僕は顔を拭うと頷いた。確かに僕の運命は暗い。この先に希望はないのかもしれない。 でも足掻き続けることで何かを変えることも出来るかもしれない。 全ては徒労に終わるのだと早々と自分の運命に見切りをつけて諦めてしまうことこそが自分の運命を諦めてしまうことだったのだ。挑み続けていればわずかながらでも良い方向に運命を変えることは出来る。 「ありがとうございました」 僕は老爺に深々と頭を下げると店の入り口に向けて力強く駆け出した。
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