1 知らせ

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
その日は、猛暑日各地で記録され、今後も猛暑日が続くだろうと天気予報士が何度もテレビで言っている日だった。 父方の祖母が亡くなったという連絡がきたのは…。 不規則な勤務で働いている私の携帯が鳴り、 出てみると、慌てたような声の母からの電話だった。 「どうしたの?慌てた声で。」 「そりゃ慌てるわよ。ばあちゃんが亡くなったのよ。施設から、昨日急に電話来たかと思ったら、危篤状態だから、早く来てくださいって連絡で、急いで向かって、なんとか看取ることは出来たのよ。やっとアンタ達に連絡できる余裕が出来たから、電話したの。」 「そうなの。ってことは、休みを取ればいいのね。」 「そういうことよ。休みが取れたら、早く来なさいよ」 と言いたいことだけを言って、電話は切れた。 同居していた祖母が亡くなったいうのに、 涙は流れなかった…。ただ呆然としていた。 悲しいのか、悔しいのか、なんともいえない気持ちだった。 祖母は、私が就職して、3年目くらいの年に、数年前から患っていた認知症が酷くなり、自宅での介護が難しくなり、施設に入所していた。 その祖母とは私が高校卒業するまで同居しており、世話をしてくれていた。 進学を機に地元を離れてからは、学生中は帰省はしていたものの、就職してからはなかなか帰れずにいた。というよりも、帰らないでいた。いや、帰りたくなかったからだ。 亡くなった祖母に会いたくなかったから…。 呆然としたなか、再度携帯を持ち、 職場に電話を掛けた。 幸いなのか、翌日から休みを貰っていた私は、 その休みを含めて、一週間程の休みを貰えた。 亡くなった知らせを受けた日は、 どんなに時間が経っても、 涙は流れなかった…。 18年も一緒に暮らしたのに…。 薄情な孫なのかもしれない。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!