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風が冷たくなった秋のはじめのことだった。
二度目の高校生活も終盤に向き、自分と向き合う時間が増えたこの頃、僕にはひとつの悩みがあった。
僕、名倉 偲(なくら しのぶ)は同級生である苑崎 遥(そのざき はるか)に恋をしていたのである。
恋、と言ってもそんな綺麗なものではない。
何故か、それは遥も僕も男だったからである。
恋人、それは男女というものが一般的なこの世界で、僕は明らかに異質で常軌を反らしていた。
では何故、異常と言われても僕は恋に落ち、それを認めたか。それは遥だからこそのことだった。
よく、テレビなどで「好きになった人がタイプ」とコメントする人がいる。あれと全く同じなのだ。
遥だから僕は好きになった。遥だからこそ僕は、可笑しいと言われようと好きと胸を張って言えるんだと思う。
しかし現実はそんな都合の良いものではなく、ただ彼の姿を目で追うだけで精一杯。
幸いクラスは同じなので、運が良ければ週に何回か話をする。
そんな他愛もない関係だった。
それでも、そんな君が愛しくて、話すだけで気持ちが明るんで、ただそれ以上のない関係が苦しくて。
僕は来る明日が憎かった。
彼と話している時間だけ、切り取れればいいのに。
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