1人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
悲しくて
ある日、遥が告白された。
女子というのは複雑怪奇だ。こう言うと誤解を招くかもしれないけど、少なくとも僕はそう思った。
恋文、つまりラブレターを僕伝いで彼に渡したから。
「は、遥くんに、渡して…くれるかな。」
有無を言わさない質問。それは手紙を渡した彼女な周りに立つ二人の女子生徒から発せられる圧で十分分かった。断ればどうせ「酷いやつ」だとか「最低」だとわめきたてるのだろう。
僕としては好きな人に自分からの物ではないラブレターを渡される方が酷だと思うが、きっとこの子たちに僕の気持ちは汲まれていなくて、汲まれる必要も意味も、その気があることさえもずっと理解されないんだろうなと言葉を飲み込んだ。
それから、もっと傷付いたのは渡した時だった。
それは、遥が悪いんじゃない。
「偲からラブレターだって」
「え?まじで!ほんとかよ」
笑い、笑われた。
勿論、僕からではない。冗談半分、茶化されたんだろう。
それでも、それでも、僕が渡せば、そうなるんだと、改めて僕と周りの世界の差を思い知らされた。
そこで遥も「気持ち悪い」と笑わなかっただけ救いだったけど。
あのとき僕はどんな顔をしていたかわからない。
「やめてよ、女子から」
と笑顔を見せたつもりだったが、頬がひきつっていた感じがした。
僕は臆病だ。
最初のコメントを投稿しよう!