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『秀明歯科クリニック』 武夫が産まれた頃開業した歯医者だ。玄関でスリッパに履き替え、受付に保険証を出す。  朝一番に予約を入れたからだろう。小ぎれいな白い壁紙の待合室には老人が一人座っているだけだ。 「お電話の方ですね。初診になりますから、問診票にご記入お願いします」  薄く化粧をした受付の女性が、紙とボールペンを差し出す。  歯の痛みを取りたい。に大きくマルをつけ、問診票を埋めてゆく。 アレルギー歴、無し。 喘息等の既往歴、無し。  現在服用しているお薬。 うっ、とペンを走らせていた手が止まる。リピ、、、、、、。何とかのジェネリックだ。歯医者も処方を出すことを失念していた。備考欄に脂質異常症の薬。とだけ記入して、受付に出す。 「広瀬信二さま」5分と経たず、名前が呼ばれる。一番の診察室へどうぞ、と誘導され、緑色の、ゴムみたいな質感の椅子に座る。病院独特の消毒液らしき臭い。 いくつになっても歯医者は嫌だ。 「初めまして。一郎です」  青い白衣(?)を着た歯科医が挨拶する。  俺と同年代か、少し上だろう。経験と体力が両方備わったエース。という印象だ。
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