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 歯医者はそつなく麻酔をかけ、欠けた部分にパテのようなものを詰めた。  詰めてもらった箇所を舌でなめる。  一か所歯の質感が変わるだけでこうまで違和感が強いとは。  3回で終わるという俺の考えは見事に打ち砕かれた。  ブラッシング指導、歯石除去、削ってみて、深いようなら型をとって埋める。 一体何回通わせる気なのだろう。仕事の予定はもちろんのこと、じいさんの介護や、子供の送迎、全部妻に押し付ける訳にもいかない。    次回の予約をとり、クリニックを出る。麻酔の影響だろう。上唇がピリピリし、こそばゆいような感覚だ。  自宅に帰り、テレビをつける。この時間帯は主婦をターゲットにしたワイドショーばかりだ。ぼんやり眺めていたが、内容は全く頭に入ってこない。  ちょうど正午頃、麻酔が切れた。そばを茹でて、簡素な昼飯をとる。
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